大判例

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名古屋高等裁判所 昭和26年(う)420号 判決

一件記録によれば所論の仮処分は被告人と新井かねとの間になされたものでその執行の内容は執達吏において当該仮処分の対象たる土地に対する新井かねの占有を解いて自からその占有保管をなし同人に対し該土地えの立入を禁止すると共に被告人及びその代理人に当該土地えの立入使用収益を許容するというにあるところ本件の被害者小寺文子は右仮処分前の昭和二十三年中から当該土地内の一部を被告人から適法に借地して建築された家屋(同二十五年十二月十九日取毀)に居住し同家屋から公路に到る通路として被告人の許諾を得て当該土地の一部と思われる場所を通行していたものであり従つて右新井かねの承継人乃至右仮処分事件の参加人等その他右仮処分の効力に拘束せらるべき関係にあるとは認め得ない小寺文子に対し右仮処分の執行を理由として従前からの用法に従う範囲においてする通行を拒否し得べきものでなく即ち小寺文子は通行権の行使として当該土地に立入る権利があるのであつてその立入を目して不正の侵害としその阻止を以て正当防衛なりとなすことの許さるべきでないことは明かである尤も右借地権が本件発生当時猶存続していたか否か若干疑問のあるところであるが仮りに借地権が消滅していたとしても被告人が法律上認められた手段によつてその家屋の撤去を強制することは格別、その家屋が現存しこれに居住する限りその公路との従前の通行権が直に消滅するものとは解し得ない。加之原審検証の結果及び一件記録によるも本件問題の場所は明かに通路の形態をなしており且つその外に適当な通行箇所がなく(右家屋と公路とを連絡し得るものとして巾約一尺の畦畔があるようであるがかかるものは単に耕作地区劃標識乃至耕作の便宜にのみ供すべきものであつて社会常識上通路ではなく又耕作に関係のない一般人が通路として使用すべきものでもない)且つその通行に使用することによつて被告人にその耕作妨害その他特別な損害を与えるものとも認められないのであるから斯る場合被告人の許諾に係る通行権の存否は兎も角として社会正義上その居住家屋と公路との通行権が存するものと認むべきは当然なことでありその通行を不正の侵害としこれを阻止することが正当防衛であるとの論旨は到底採用し難いものというべく被告人の正当防衛の主張を排斥したことを以て原審に所論の違法があるとすることはできない。

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